この恋、温め直しますか? ~鉄仮面ドクターの愛は不器用で重い~
 その心情を高史郎も察してくれたのかもしれない。

 彼はスッと環から身体を離し、ベッドをおりる。

「すぐ済ませる」 

 背中で告げる彼の声がいつもよりとがって聞こえるのは思いすごしだろうか? 

「えぇ、そうですが」

 デスクの前、こちらには背を向けた状態で高史郎が電話に応答している。

 口調からして親しい相手ではなさそうだ。彼はなにやら話し込んでいる様子だけれど、環の意識はそこから遠ざかっていく。

(どうしよう。電話を終えた彼になんて言えばいい?)

 あの電話が少しでも長引くことを祈りながら環は必死に思考を巡らせる。

(まずは暴言を謝罪して、もう一度……やり直すなんてできる?)

 先ほど感じた本能的な恐怖が蘇ってくる。

 再度挑戦したとしても自分は結局また彼を拒絶してしまう気がした。ならば素直に「ごめんなさい」をすべきだろうか。

(でも、要くんからしたら『なにを今さら』って感じだよね)

 あなたが好き。だけど、あなたに抱かれるのは怖い。

 環のなかでは矛盾なく両立している感情だけど。それをうまく伝えるのは途方もなく難しく思えた。

「……だから」

 耳にボソボソと意味をなさない音が入ってくる。
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