この恋、温め直しますか? ~鉄仮面ドクターの愛は不器用で重い~
「環、聞いてくれ」

 強めに呼びかける彼の声で環はようやく現実に引き戻された。

「あ……」

 いつの間にか彼は電話を終えていたようだ。

 ベッド脇に立つ高史郎は冷たく硬い表情をしている。

「悪いが帰ってくれないか」

(え?)

 カエッテクレナイカ。

 その言葉は切れ味鋭い刃となって環に突き刺さる。

 質問の形をとってはいるが返事を待つ気はないようだ。

 高史郎はハンガーにかけられていた環の上着を取り押しつけてきた。

「すぐそこの大通りまで出れば、タクシーがつかまるから」

 答えられない環を無視して彼は続ける。

「連絡する」

 フォローの言葉というより、こちらに否を言わせないダメ押しだと感じられた。

 半ば追い出されるような形で環は彼の部屋を出る。

 十二月の夜。冷え切った外気が頬を刺す。

 さっき彼と一緒にいたときは、この冷たさが心地よく思えたのに……今は寒くて寒くて凍え死んでしまいそうな気分だ。

(ひどい言葉を投げつけたから? それとも拒んだ時点でダメだった?)

 彼のなかで自分は〝なし〟の判定になってしまったのだろうか。

「べ、別にそんな人ならこっちから……」
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