この恋、温め直しますか? ~鉄仮面ドクターの愛は不器用で重い~
 誰にも顔を見られたくないし、話したくもない。

 今は一刻も早くひとりになりたかった。それなのにコンクリートの地面だけを見つめて足を動かす環の腕を誰かが後ろから強く引いた。

「環っ」

 弾かれたように振り返ると、今もっとも会いたくない人物がそこにいた。

 今日も変わらずに涼しげな顔をした高史郎を前にすると感情のうねりがますます勢いを増してコントロールを失いかける。

(今は無理。ちゃんと話せる気がしない)

「ごめん、急いでいるから」

 彼の手をふりほどき環はサッと顔を背ける。

「待ってくれ」

 強引に引き止めようとする彼を衝動のままキッとにらみつけてしまった。

「今さらなに? 二週間も無視してたくせに」

(あぁ、こんな言い方をしたいわけじゃないのに)

 初めての恋は楽しいばかりではなく……環の幼く未熟な部分もむき出しにした。

 傷ついた自分を理解してほしい、謝ってなぐさめてほしい。そんな願望ばかりが先走って止められない。

「それは申し訳なかったと思ってる。だから話を――」
「もういいの。なにも話したくないから」
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