この恋、温め直しますか? ~鉄仮面ドクターの愛は不器用で重い~
まるきり喧嘩腰の環に、高史郎は「はぁ」と深いため息を落とす。
自身の顔を覆った彼の大きな手。その指の隙間から失望したとでも言いたげな瞳がのぞいている。
「君がそういう面倒なタイプの女とは……想定外だな」
環の満面にカッと朱が注がれる。
「私だって! 要くんがこんなにひどい人とは思ってなかったよ」
互いに相手に傷つけられたという顔をして、謝罪の言葉はどちらの口からも出てこない。
重苦しい沈黙だけがふたりの間に横たわる。たった今築かれた見えない壁はもう一生越えることなどできない気がした。
「さよなら」
そう言い捨てて、環はくるりと踵を返した。
それから月日は流れて四月。
環は五年生に進級し、通う校舎もそれまでの武蔵野市から文京区へと変更になった。
「え、映画サークルやめちゃったの? それって例の気まずくなった彼のせい?」
心配そうにたずねてくる麻美に環は笑って首を横に振る。
「ううん。もともと四年生までと思ってたの。ほら、いつまでも居座っていると後輩たちがやりづらいだろうし」
自身の顔を覆った彼の大きな手。その指の隙間から失望したとでも言いたげな瞳がのぞいている。
「君がそういう面倒なタイプの女とは……想定外だな」
環の満面にカッと朱が注がれる。
「私だって! 要くんがこんなにひどい人とは思ってなかったよ」
互いに相手に傷つけられたという顔をして、謝罪の言葉はどちらの口からも出てこない。
重苦しい沈黙だけがふたりの間に横たわる。たった今築かれた見えない壁はもう一生越えることなどできない気がした。
「さよなら」
そう言い捨てて、環はくるりと踵を返した。
それから月日は流れて四月。
環は五年生に進級し、通う校舎もそれまでの武蔵野市から文京区へと変更になった。
「え、映画サークルやめちゃったの? それって例の気まずくなった彼のせい?」
心配そうにたずねてくる麻美に環は笑って首を横に振る。
「ううん。もともと四年生までと思ってたの。ほら、いつまでも居座っていると後輩たちがやりづらいだろうし」