この恋、温め直しますか? ~鉄仮面ドクターの愛は不器用で重い~
 環は早速、緑邦大担当のメンバーに声をかけてチーム始動の簡易ミーティングを開くことにした。空いていた打ち合わせスペースで、丸いテーブルを囲む。

「チーフを務めさせてもらうことになった速水です。あらためて、よろしく」

 すでに五人全員が顔見知り、自己紹介は不要なメンバーなのですぐに本題に入る。

「みんなもわかっていると思うけど、来期の営業の軸は例の新薬です。地域医療の中核である緑邦大病院に有用性を認めてもらえれば、ほかの病院での採用もどんどん増えると思うから」

「新薬の普及は僕たちの働きぶり次第ということですね」

 一番若手の男性社員の言葉に、環は深くうなずく。

「そのとおりよ。みんなで力を合わせて新薬を患者に届けましょう!」

 アスティー製薬が現在もっとも注力しているのが脳梗塞の急性期に有効な新しい治療薬『ロパネストラーゼ』だ。後遺症の軽減効果が期待できる。

(脳梗塞は深刻な後遺症に苦しむケースが多い病気のひとつ。新薬の普及で救われる人はたくさんいるはず!)
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