この恋、温め直しますか? ~鉄仮面ドクターの愛は不器用で重い~
「なんだ、なにを笑っている?」

 環はハッとして緩みかけていた頬を引き締めた。

 コホンと咳払いをしてから、彼のマグカップに視線を送る。

「これはMRとしてではなく元同級生としてのアドバイスですけど……誰かとコーヒーを飲むときには、相手にも『ミルクとお砂糖どうしますか?』って聞くといいと思いますよ」

 子ども扱いされたと感じたのだろうか。彼は拗ねたようにフイと視線を斜め下に落とした。

「……俺たちはつい先日初めて会った。そういう設定じゃなかったのか?」
「あっ」

 意地悪な指摘に環は右手で自分の口元を押さえた。

(そうだった。嫌だ、私ったらなにを懐かしいなんて思って……)

 自分にとって彼は再会を喜ぶような相手ではないはずなのに。

「そもそも」

 高史郎の声が一段低くなり、黒い瞳は射貫くような強さでこちらを向く。

「環はブラックだろう? 知っていることをいちいち尋ねるのは時間の無駄だ」

「そ、そんなこと……どうして覚えて……」

 胸がドクンと跳ねたような気がした。その事実を否定したくて、環は軽く頭を振る。

(いやいや。気のせいよ、気のせい)
< 81 / 222 >

この作品をシェア

pagetop