この恋、温め直しますか？ ～鉄仮面ドクターの愛は不器用で重い～

　今日の環のファッションは水色のボウタイブラウスにライトグレーのパンツスーツ。

　とくに地味でも派手でもなくＴＰＯに合っていると思うのだが、瀬田はお気に召さなかったらしい。

　もっとも、こちらとしてはドクターに服装を気に入ってもらう必要はまったくないわけだが。

　女性ＭＲに夜の店のお姉さん的役割を期待する、時代遅れの化石のような男性ドクターはいまだに結構な数存在している。彼もそのタイプのようだ。

「君はそこそこ綺麗な顔をしてるんだし、きっとスカートのほうが似合うよ」

　上から目線の中途半端な褒め言葉を口にのせつつ、彼は環の太ももに手を伸ばしてきた。

　もちろん不愉快だけれど顔には出さない。こういうドクターへの対処法は女性ＭＲの諸先輩方たちからレクチャーを受けていてとっくに習得済みだ。

　華麗に身を引いて瀬田の手をかわす……つもりだったのだけれどその必要はなかった。

　環をかばうように前に出てきた高史郎が瀬田の手をパシッとつかんだからだ。

「服装とＭＲの能力には、なにか相関関係があるのでしょうか？」