この恋、温め直しますか? ~鉄仮面ドクターの愛は不器用で重い~
 ためらいがちに紡がれた彼女の言葉を要約すると、彩芽のコーディネーターは新しい派遣の子に負けないようもっとがんばれといった趣旨のことを彼女に告げたらしい。

『ほかにいい子が入ってくるとね~。ほら、評価って相対的なものだから』

 そんな言葉で発破をかけられたと彩芽は打ち明けてくれた。

 コーディネーターに悪気はなかったのかもしれないが、正社員を目標にしている彩芽はその言葉に不安と焦りを感じてしまったのだろう。

 たしかに隣の課にきた彼女は『機転がきく』と評判もいい。でも――。

「彼女には彼女の、彩芽ちゃんには彩芽ちゃんのいいところがあるんだから比べる必要はないと思うな」

 誰かと比較して自分の長所を消さないでほしい。そんな気持ちで環は彼女にほほ笑みかけた。

「少なくとも、私は彩芽ちゃんの丁寧な仕事ぶりに感謝しているよ」

「……そうですよね。忙しい速水さんに愚痴なんか言ってすみません。もっとちゃんと、がんばります」

 言葉は前向きなものの彩芽の表情はあまり晴れない。むしろ思いつめたような危うさが伝わってくる。

(彩芽ちゃん、真面目すぎるところがあるから)

「あまり無理はしないでね」
< 91 / 222 >

この作品をシェア

pagetop