この恋、温め直しますか? ~鉄仮面ドクターの愛は不器用で重い~
「なんの礼だ? 俺は院長に頼まれて彼を捜していただけだよ」

(あれ、助けてくれたわけじゃなかったのか)

 瀬田のセクハラ行為は高史郎には見えていなかったようだ。

「ええっと、こちらの話なのでお気になさらず」

 とはいえ、院長と高史郎の行動に助けられたのは事実なので礼を撤回することもしなかった。

「ふぅ」

 高史郎は細く息を吐くと、グラスのドリンクを上品な仕草でひと口飲む。

 学生時代も思ったことだが彼は何気ない所作がとても綺麗だ。育ちのよさを感じさせる。

「パーティーは退屈ですか?」
「ん?」

「さっきからずっと、帰りたいって顔をしてますよ」

 図星なのか、彼はかすかに眉根を寄せる。

「そんな顔はしていない。にこやかに過ごしているはずだ」

 あれで? そう思ってしまったことは内緒にしておくべきだろうか。

(どう見ても仏頂面だったけどなぁ)

 笑いを押し殺す環に気がついたのだろう。高史郎がムッとしてこちらを見る。

「なんだ、なにが言いたい?」
「いいえ、なにも。楽しんでいただけているならなによりです。このホテルは料理がおいしいことで有名なのでたくさん召しあがってくださいね」
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