恋人同盟〜モテる二人のこじらせ恋愛事情〜【書籍化】
(氷室くん、どうするつもりなんだろう)

デスクでカタカタとパソコンに向かっている弦を、めぐは隣からそっとうかがう。
ものすごい速さで文字を打ち込むと、「よし!」と言ってマウスをクリックした。
と、めぐのパソコンにメールの通知が来る。
開いてみると、弦が全社員に送った一斉メールだった。

『本日のナイトショーにおける皆様のご協力のお願い』

本文を読むと、昨日のショーが予想以上に盛況で危険な状況だったこと、今夜は万全を期してスタッフが誘導し、ゲストの安全を守ることがまず説明されていた。
更には、キャナルガーデンの鑑賞エリアは早々に満員となりそうなこと、楽しみに来てくれたゲストをがっかりさせない為に2回公演を実現させたいことが書かれている。

『その為には現場を取り仕切るスタッフの人員が足りません。突然の、しかもクリスマスの夜にお願いすることになり大変恐縮ですが、一人でも多くの方にご協力いただけますと幸いです。本日21時半までの勤務にご協力いただける方は、広報課の氷室か雪村までお知らせください。どうぞよろしくお願いいたします』

めぐが読み終わった時、「はい!」と環奈が手を挙げて立ち上がった。

「私、スタッフやります!」
「えっ?環奈ちゃん、デートは?」
「そのあと楽しみますよ。だって私も彼にショーを観せてあげたいですもん。昨日はギュウギュウでちゃんと観られなかったんです。今夜も1回公演なら、またちゃんと観られないかもしれませんから」
「環奈ちゃん……」

すると後ろの席からも次々とメンバーが立ち上がった。

「私もやります!結婚してるから、家に帰ってケーキ食べるだけだもん」
「俺も。どうせクリぼっちで予定なかったし、お役に立てるならその方がいい」
「私も9時半までなら大丈夫。彼の仕事終わりが遅いから」

皆さん……と、めぐは涙が込み上げてきた。
弦と顔を見合わせて頷く。

「ありがとうございます!ご協力に心から感謝します」

他の課からも続々とメールが届き、あっという間に必要な人数が揃った。

「よし!めぐ、もう一度企画課に行くぞ」
「はい!」

再び企画課の課長のもとに行き、名乗り出てくれた社員のリストを渡す。

「はあ、やれやれ。やり手だとは聞いてたけど、さすがだね、氷室くん。分かった。私から部長を説得しよう」
「本当ですか!?」
「ああ。私だってゲストに楽しんでもらいたい。それに社員の気持ちにも応えなきゃな。あとのことは任せなさい」
「ありがとうございます。よろしくお願いいたします」

弦と共にめぐも深々と頭を下げる。
テレビ取材のクルーを出迎える11時頃には、全社員に今夜のナイトショーが2回公演に変更されたことが周知された。

「ホームページとSNSの書き換えは私がやっておきます!」
「ありがとう!環奈ちゃん」

めぐは環奈にお礼を言うと、弦と一緒に急いでクルーの出迎えに向かった。
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