君の心に触れる時
翌日、春香がようやく意識を取り戻した時、蓮はすぐに彼女の顔を見つめ、声をかけた。
「春香、よかった…目を覚ましたんだな。」
春香は目をゆっくりと開け、ぼんやりとした視線で蓮を見つめた。彼女は頭が重く、体もまだ力を入れることができなかった。しかし、蓮の顔を見ることで、少しずつ現実が戻ってきた。
「蓮…」
春香はかすれた声で彼の名前を呼ぶ。蓮はその声に心が温かくなるのを感じ、涙をこらえながら彼女の手を握りしめた。
「大丈夫だ、もう何も心配いらない。」
蓮は彼女の手をしっかりと握り、顔を近づけると、春香の目に涙が溢れた。
「私、逃げようとした…あのまま、もし本当に倒れてしまったら、どうしようって思った…。」
春香は涙を流しながら、蓮に謝るように言った。その言葉が、蓮の胸を痛めたが、同時に彼女の弱さや不安が感じられ、思わずその肩を抱きしめた。
「もう、そんなこと言わないで。お前は一人じゃない。」
蓮は春香をそっと抱きしめ、彼女の背中を優しく撫でた。どれだけ心配したことか、どれだけ彼女を守りたかったのか、その気持ちが溢れ出すようだった。
「蓮、私…」
春香はまだ言葉に詰まるが、蓮の抱擁に応え、少しだけその手を彼の背中に回した。
「春香、君が怖がる必要はない。俺はずっと君のそばにいる。」
その言葉が春香の心に深く刻まれ、涙が止まらなくなった。彼女は蓮にすがるようにして、涙を流しながら言った。
「ありがとう、蓮。私、あなたがいなければ、何もできなかった。」
「それは俺も同じだよ。俺だって、君がいなければ何もできなかった。」
蓮は春香を優しく見つめ、微笑んだ。その顔には、彼女を守りたいという強い意志が込められていた。春香はその微笑みに安心し、心の中で少しずつ自分を受け入れようとしていた。