君の心に触れる時
蓮と仲直りができない日々が続いた春香は、深い痛みと共に目を覚ました。

自分がどれだけ絶望していたのか、心の中でぐるぐると考えていた。
痛みのせいで体が重く、意識がぼんやりしている中で、春香はふと手元を見た。点滴のチューブが外れ、血が静かに流れ出ているのが見えた。

「こんなこと、もう意味がない…」

絶望感に包まれ、春香は無意識に血が流れ続けるのを眺めていた。彼女はその光景に吸い込まれるような感覚を覚え、心の中でどこかでその流れを止めたくないと思う自分と、逆にその流れを続けたくなる自分がいた。

「こんな私を誰も助けてくれない…」

蓮との喧嘩から時間が経ち、二人は言葉を交わすこともなかった。春香は蓮を傷つけてしまったと思い込んでいたが、その裏で蓮もまた、彼女を支えきれなかった自分に苛立ちを抱えていた。あの看護師の言葉が頭をよぎり、春香は自分がどれだけ無駄に生きているのかを痛感していた。

「もう…どうでもいい。」

その時、春香の意識が途切れかけた。出血が続き、息が苦しくなり始めたが、彼女はそれをただ静かに受け入れていた。もう、何もかもがどうでも良くなっていた。そんな思いが、春香の心を満たしていった。
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