君の心に触れる時
春香と蓮は、病院の庭に出ていた。
風が少し冷たかったが、春香にとってはその空気がとても新鮮で、気持ちを落ち着かせてくれるように感じた。
「こうして外に出るのって、久しぶりだね。」
春香は静かに言い、少しだけ笑顔を見せる。
彼女にとって、外の世界がどれほど遠く感じられるようになったのか、蓮はその表情を見て何も言えずにいた。
「そうだな。お前が元気を取り戻してきた証拠だな。」
蓮は柔らかく答えると、春香は小さく頷いた。
「でも、まだ不安なんだ。私、こんな状態じゃまた…あなたに迷惑をかけるんじゃないかって。」
春香は足元を見つめながら呟いた。自分を支えてくれる蓮に、迷惑をかけたくないという思いが強く、どうしてもその不安が消えなかった。
蓮はその言葉をしばらく黙って聞き、そして静かに春香の手を取った。
「迷惑なんて思わない。お前が思っている以上に、俺はお前のそばにいることで力をもらっている。」
蓮の言葉は、春香の胸に優しく響いた。彼が自分を支えてくれていること、そして自分がどれほどその存在に救われているのかを、今更ながらに実感する。
「でも…蓮が言ってくれたこと、本当に信じてもいいの?」
春香は少し恐る恐る、蓮を見つめた。
蓮は彼女の瞳をじっと見つめ返し、力強く答える。
「信じろ。お前が思うより、俺はお前のことが大事なんだ。」
その言葉に、春香は目を伏せ、涙がこぼれそうになるのを必死でこらえた。自分を支え、愛してくれる人がいる。それだけで、どれだけ心強いことか。それをどうしても受け入れきれなかった自分を、春香は少しだけ恥じる。
「蓮…ありがとう。」
春香は心からの感謝の気持ちを込めて、もう一度蓮に言った。
「ありがとうなんて言うなよ。」
蓮は照れくさそうに言いながらも、春香の手をしっかりと握り返した。