君の心に触れる時
翌日、蓮は親友の智己と病院の屋上で会っていた。
コーヒーを片手に、冷たい風を受けながら話し合う二人。智己はいつもの軽い口調を抑え、真剣な表情で蓮に語りかけた。
「お前、春香の気持ちにどこまで寄り添えてる?」
「俺は、春香に移植を受けてもらいたい。それが一番の解決策だってわかってるから。」
蓮はそう答えるが、その目は揺れていた。
智己は首を横に振った。
「それじゃダメだ。お前の言う『一番の解決策』が、春香にとってもそうだとは限らない。彼女が抱えてる不安や恐怖を、ちゃんと見てやらないと。」
蓮は黙り込んだ。
智己の言葉が胸に刺さるように響いていた。
春香の命を救いたい一心で、彼女の気持ちを深く考える余裕がなかったことに気づいたのだ。
その夜、蓮が病室を訪れると、春香は彼を待っていた。彼女の顔には迷いが消え、どこか覚悟を決めたような表情が浮かんでいた。
「蓮、手術を受けること、考えるよ。」
「本当か?」
蓮は驚きつつも嬉しさを隠せなかった。
「うん。でも…正直、まだ怖い。でもね、蓮と一緒に生きていきたいって思ったの。だから、頑張りたい。」
春香の言葉に蓮の目が潤んだ。彼女の決意が、自分の心を揺さぶった。
「ありがとう、春香。俺が絶対にお前を守る。」
蓮は強く彼女の手を握った。