君の心に触れる時
手術が終わり、数日が経過した。
春香は集中治療室で安静を保ちながら眠り続けていた。
生体反応は安定しているが、未だ意識は戻らない。
蓮は、疲労と緊張で身体を酷使しながらも、彼女のそばを離れようとはしなかった。
智己や看護師たちが交代で休むよう促すが、蓮は首を横に振るだけだった。
「春香、俺の声が聞こえてるか…?手術は成功したんだ。だから、もう少しだけ頑張れよ。」
彼は静かに春香の手を握りながら呟いた。
その手には、彼女のか細い脈が確かに感じられた。
その夜、病室は静寂に包まれていた。
蓮が机に伏せて居眠りしていると、微かな物音が聞こえた。
「…ん…」
春香の口から漏れる小さな声に、蓮はハッと目を覚ました。彼女のまぶたが微かに動き、ゆっくりと開かれていく。
「春香!」
蓮はすぐに彼女の顔を覗き込んだ。
「…ここ…どこ?」
春香の声は弱々しく、かすれていたが、確かに彼女の声だった。
「病室だよ。手術は成功したんだ。お前、頑張ったな。」
蓮は微笑みながら涙を堪えた。
春香の目には、安堵と戸惑いが入り混じった感情が浮かんでいた。
「…生きてるんだ、私…?」
「当たり前だろ。約束しただろう?俺がお前を救うって。」
春香はその言葉に、そっと涙を流した。
「ありがとう…蓮…」