憧れの上司は実は猫かぶり!?~ウブな部下は俺様御曹司に溺愛される~
尊敬する。
その旨、メールにしたためて送信する。
夕方、帰る前に届いた返信では私のおだて方が上手いからだと愚痴りつつ、次も一緒に仕事がしたいといってくれて嬉しかった。



週末は予定どおり、引っ越しだった。

「じゃあ、よろしくお願いしまーす!」

荷物の載ったトラックを送り出す。
そんな私の隣には男の人が立っていた。

「いよいよ新居か。
楽しみだな」

「そうだね」

わざとらしく大きな声で言い、男――兄が私の肩を抱く。

「……こっち見てる男がいる」

兄が視線で指す先を見ようとしたが、止められた。

「無視しとけ」

「……うん」

促され、もうなにもない部屋を一度点検して、兄の車に乗った。
今日は兄の部屋に泊めてもらう予定になっている。
引っ越し業者も兄が手配してくれ、いったん預かってもらって明日、別のトラックで運ぶ手配になっていた。
そんな要望を聞いてくれた業者にはもう、感謝しかない。

「これで彼氏がいるって勘違いしてるだろうし、大丈夫だと思うんだけどな」

「だといいんだけど……」

もし引っ越し先を突き止められたらと思うと気が気ではない。

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