憧れの上司は実は猫かぶり!?~ウブな部下は俺様御曹司に溺愛される~
私のほうがお礼に奢る立場だというのに、兄はコンビニでデザートまで買ってくれたし、駐車料金も払わせてくれなかった。

「じゃ、気をつけて帰ってね」

「オマエもなんかあったらすぐ、連絡しろ。
また近いうちにメシ、行こうな」

帰っていく兄を見送り、私もマンションへと戻る。
私から見て本当に気のいい兄だし、顔も悪くないはずなのになぜか彼女ができない。
これは私の、長年の謎だった。

マンションに帰り、エレベーターを待っていたら玄関が開く。
挨拶したほうがいいよねとそわそわしながらエレベーターを待っていたら、やってきた人物を見て一瞬、固まった。

「井ノ上……?」

「宇佐神、課長……?」

相手も状況が飲み込めていないようで、眼鏡の向こうでパチパチと何度か瞬きをした。
なんで宇佐神課長がここにって、住んでいるからか……もしくは。
そのタイミングでエレベーターが到着し、ドアが開く。

「どうぞ」

「じゃあ」

プライベートとはいえ、上司なので先を譲る。
乗り込みながら彼に腕を絡ませている女性が、勝ち誇った視線を向けてきてムッとした。

「何階ですか」

「四階」

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