憧れの上司は実は猫かぶり!?~ウブな部下は俺様御曹司に溺愛される~
ひとりで立つこともままならないのに、七星が断ってくる。
こんなときくらい、頼ってくれればいいのにと、歯痒くなった。

「そんな状態だと無理だろ。
病人はおとなしく上司の指示に従う」

「ううっ。
……すみま、せん」

申し訳なさそうに詫びてくる七星が愛おしい。
が、今はそんな愛でている場合ではない。

少しのあいだ七星を他の人に頼み、自分も急いで帰宅の準備をする。

「今日はもう戻ってきませんので、なにかありましたら連絡ください。
ではあと、よろしくお願いします」

七星を抱き上げたが、抵抗されなかった。
普段ならこんなことをしようものなら恥ずかしがるか烈火のごとく怒るかのどちらかだろうに。
無防備に俺に身体を預ける彼女を見ていたら、俺まで苦しくなってくる。
今すぐに病院へ連れていくから、少し待っていてくれ。

会社を出たところでちょうど、部下が呼んでくれたタクシーが到着した。
七星と一緒に乗り込み、自宅近くの病院へと向かう。
抱きかかえている彼女の息が、荒い。

「大丈夫だ、大丈夫」

額に滲む汗を拭いてやり、たいしたことがないように祈っていた。

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