憧れの上司は実は猫かぶり!?~ウブな部下は俺様御曹司に溺愛される~
確かにこちらの要望とはまったく違うものを出され、しかも話も聞いてくれないとなればそうなるだろう。

「デザイナー、KENEE(ケニー)さんだっけ?」

「そうですー」

「わかった、私から話してみるよ」

「ありがとうございます、お願いします!」

がしっと私の手を両手で力強く掴み、由姫ちゃんはうるうると潤んだ大きな目で私を見てきた。
ピンクのアイシャドーがよく似合う彼女は、背ばっかり高くて地味化粧の私なんかより断然、可愛い。
彼女が自分の席に戻っていき、私はメッセージアプリを立ち上げた。

大学を卒業し、化粧品会社『KAGETSUDOU(カゲツドウ)』の広告宣伝部で働き始めて四年。
もうすっかり落ち着き、後輩からも頼られる存在になった。
……いや。
頼られるのは入社時からそうだったような。
背が高く、よくいえばスレンダー、悪くいえば痩せぎすな身体。
長い黒髪をひとつ結びにし、ナチュラル控えめメイクといえば聞こえはいいが、要するに地味メイクの私の、大学時代のあだ名は〝姐御〟だった。
竹を割ったような性格で誰からの相談事も乗る私は頼りがいがあったらしい。
< 2 / 411 >

この作品をシェア

pagetop