憧れの上司は実は猫かぶり!?~ウブな部下は俺様御曹司に溺愛される~
「あー、と?
井ノ上さん?」

それは完全に戸惑っていた。

「恋も知らない処女じゃあるまいし、その反応はないだろ」

課長は困り果てているけれど。

「その、恋も知らない処女なんですー」

「へ?」

再び彼が、間抜けな声を出す。

「嘘だよな?
彼氏いただろ」

彼氏とはいったい誰のことかと思ったが、たぶん送ってくれた兄を誤解しているのだろう。

「彼氏とかいません。
たぶん、誤解しているのは兄です」

半泣きの私に手を貸し、課長が立たせてくれる。

「ふぅん。
男を手玉にとってそうな井ノ上さんが恋もまだな処女、ねぇ」

「悪かったですね!」

馬鹿にするようににやにやと笑われ、反射的に食ってかかっていた。

「いや、俺こそ悪かった」

降参だと彼が、半ば手を上げる。

「とにかく。
あの、憧れの宇佐神課長がこんな人で幻滅しました。
それだけなんで、じゃあ」

これで話は終わりだとドアノブに手をかける。
しかし目の前に影が差し、とてつもない圧を感じて動けなくなった。

「……なあ」

「ハ、ハイ」

振り返りたくない、けれど彼の手が私をそちらに向かせる。

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