憧れの上司は実は猫かぶり!?~ウブな部下は俺様御曹司に溺愛される~
今朝床に落としたのに、買うの忘れてて」

「あ、ありますよ。
ちょっと待っててください」

引き攣った笑顔でいったん、部屋に引っ込む。
買い置きしてある歯ブラシを掴んで戻りながら、少し引っかかった。
あんなにしょっちゅういろんな女性がお泊まりしているなら、買い置きの歯ブラシくらいありそうなのに。

「これでいいですか?」

玄関の中で待っていた宇佐神課長に持ってきた歯ブラシを渡す。

「サンキュー。
極小ヘッドかー。
七星、顎小さいもんな」

「ひっ」

確認するように彼の手が伸びてきて、反射的に後ろに飛び退いていた。

「ひっでーな」

おかしそうに課長はくすくすと笑っているが、二度も同じ手は喰らわない。

「ま、懐かない猫を手懐けるみたいで面白いけどな。
じゃ、おやすみー」

ペコペコともらった歯ブラシを振りながら課長は部屋を出ていった。

「はぁーっ」

またしても大きなため息をつき、その場に座り込む。

「……勘弁してほしい」

あの猫かぶり上司め。
私はそういう耐性がないんだから、手加減してほしい。
というか、猫かぶっているのをバラしたりしないから、放っておいてよ……。


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