憧れの上司は実は猫かぶり!?~ウブな部下は俺様御曹司に溺愛される~
なんとなくじっとしていられなくて、意味もなく落ちかかる髪を耳にかけたりしてしまった。

「大変だっただろ?
七星だって毎日、帰りが遅かったのに」

「あっ、いや、龍志のほうが私のためにおかずの作り置きとかしてくれて大変だったので」

私にできることなんて彼に毎日、気持ちよく眠ってもらうくらいしか思いつかなかった。
顔をあわせるたび、日に日に濃くなっていく彼の目の下のくまに胸が痛かった。

「いつもならイベントが終わったときにはゾンビみたいになってるのに、おかげで今回はギリギリ人間に留まってたわ」

おかしそうに龍志が笑い、私も曖昧な笑みを浮かべる。
いや、全然笑い事ではないのだ、ほんとに。
それでも少しでも彼の力になれたのかと嬉しかった。

食事が終わって後片付けしたあとは、残ったワインをチーズでちびちび飲みながら予定どおりサブスクで映画を観る。
話題だっただけあって面白く、がっつりのめり込んで観ていた。
終盤にさしかかり、ヒーローとヒロインの結婚式の準備が進んでいた。

「ねえ、龍志」

「なんだ?」

「誰とも結婚する気はないって、私とも結婚する気はないってことですか?」

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