憧れの上司は実は猫かぶり!?~ウブな部下は俺様御曹司に溺愛される~
ぬるりと肉厚なそれが私の中に入ってきて、思わず目を開いて白黒させていた。
けれど眼鏡の下で少し難しそうに眉間にしわを寄せる彼が見えて、なぜか満足してまた目を閉じる。
肩を掴んでいた彼の手はそのうち私の頭を掴み、ぐしゃぐしゃに髪を乱していく。
最初はされるがままだった私も気づいたときには、夢中になって彼を求めていた。

随分経って唇は離れたが、ふたりのあいだを細い銀糸が繋いでいる。
けれどすぐにぷつりと切れ、それが妙に淋しかった。

「……はぁーっ」

ふたり同時に深い息を吐く。
再び彼から、抱きしめられた。

「幸せすぎて頭がおかしくなりそうだ」

「私も、です」

幸せで幸せで、気持ちがふわふわする。
まるで膜が一枚取れたかのように、景色が綺麗に見えた。
恋ってこんなに素敵な気持ちになるんだ。

「できるならずっと、こうしていたい」

まるで私を離さないかのように彼の腕に力が入る。
私だってできるなら、ずっとこうしていたい。
けれど彼はきっと、そのうち会社からも私の元からも去っていくのだろう。
初めての恋がこんなに切ないなんて思いもしなかった。
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