憧れの上司は実は猫かぶり!?~ウブな部下は俺様御曹司に溺愛される~
だったら、貴重な今、この時間を大事にしなければならない。
恋愛初心者だからとパニックになっている場合ではないのだ。

「……うん」

覚悟を決めて便器から立ち上がる。
彼と一緒にいられる時間、目一杯楽しもう。

手を洗ってトイレを出る。

「具合でも悪いのか?」

待っていた龍志は私の顔を見た途端、心配そうに眼鏡の下で眉を寄せた。
それくらい長いこと、私はトイレに籠もっていたみたいだ。

「無理しなくていい。
帰ろう」

「えっ、あっ、ちょっと混んでいただけなので」

慌てて平気だと笑顔を作り、適当な言い訳をする。
嘘だとわかっていそうだが、これしか思いつかなかった。

「ほんとか?
なんか顔も赤い気がするし……」

しかし彼の心配はぜんぜん晴れない。
龍志の顔を見て、また緊張がぶり返してきて顔が熱を持って赤くなっている自覚があるだけに、これ以上は誤魔化しきれない。

「……その」

けれどこんなことを告白するのは恥ずかしく、彼の袖をちょんと摘まんで俯いた。

「初めてのデートで緊張して、どうしていいのかわかんなく、て」

彼からの返事はない。
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