憧れの上司は実は猫かぶり!?~ウブな部下は俺様御曹司に溺愛される~
そう言って彼が少し持ち上げて見せてきたのは、小さなシロクマのぬいぐるみだった。
今まで気づかなかったがもしかして、課長はあれと一緒に出勤しているのか?

「連絡くださればお届けしたのに。
……お、お隣ですから」

なんとなくとなりと言うのが気恥ずかしく、少ししどろもどろになってしまう。

「んー、そーだなー」

大事そうに彼はそれをバッグにしまい、軽く伸びをした。

「そろそろ七星も帰るだろ?
一緒に帰ろう」

私の顔を見てにぱっと人なつっこく彼が笑う。
仕事中とは違うプライベートなその顔に心臓が一瞬、とくんと甘く鼓動した気がした。

「えっ、あっ」

「ほら、早く帰る準備しろ」

私の気持ちなど知らず、彼が急かしてくる。

「早くしないとおいて帰るぞー」

「えっ、ちょっと待ってくださいよ!」

慌てて片付けをしながらふと思う。

……別において帰られたところでなんの支障もないのでは?

「ほら。
早く、早く。
あと一分でさらに残業代つけないといけなくなるだろ」

腕時計を見ながらさらに急かされ、ああ、そういう理由かと納得した。

今日も最寄り駅を出ながらあたりをうかがってしまう。
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