憧れの上司は実は猫かぶり!?~ウブな部下は俺様御曹司に溺愛される~
へらっと締まらない顔で笑われ、ずきゅん!と心臓が射貫かれた気がした。
いや、ずきゅんは古いか、昔の少女漫画じゃあるまいし。
しかし言葉にするならやはり、ずきゅんしかない。

「ほら、俺たちいろいろあってあれ、だろ?」

人前でディープな事情を話すのは憚られるので言葉を濁しながら、彼は再びショーケースの中へ視線を戻した。

「だから結婚指環の代わりになるものが早く欲しい、っていうか。
重いのはわかってるんだけどな」

ふふっと自嘲するように彼が笑い、ずくんと胸が鈍く痛んだ。
そうだ、私たちの未来に〝結婚〟は、ない。

「そう、ですね」

改めて彼の隣に立ち、一緒にショーケースをのぞく。

「私も欲しい……かも、です」

断言するのは気恥ずかしく、少しだけ濁して誤魔化した。
今できることは今やっておかなければきっと、そのときがきたときに後悔する。
だったら、ペアのリングは私だって、欲しい。

「よかった」

ほっとしたように彼が息をつく。
もしかしたら反対されるかもと不安だったのかもしれない。

指環を選ぶのに若干、揉めた。
だって龍志、やたらと高いものを選ぼうとするんだもの!

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