憧れの上司は実は猫かぶり!?~ウブな部下は俺様御曹司に溺愛される~
「なあ。
本当にこれでよかったのか?」

包んでもらった指環を手に店を出ながら、彼が心配そうに聞いてくる。

「いいんですよ、これで」

緩くウェーブしたリングにピンクゴールドのラインが入り、それにあわせて私のほうには数個のキュービックルジコニアが埋め込まれたそれは、シンプルながら可愛くて気に入った。

「ジルコニアじゃなくて、ダイヤのでもよかったんだぞ?」

「しつこいですね。
私がこれでいいって言ってるんだから、いいんですよ」

私の返事を聞き、彼がはぁっと諦めたようにため息をつく。

「遠慮すると思ってプチプラの店にしたのが失敗だったのか……?」

なにをそんなに悩んでいるのか知らないが、私としてはこれでよかったのだ。
彼の気持ちどおり、本気で結婚指環の代わりだとそれなりのものを買おうとしていたら拒否していただろう。
その気持ちは嬉しいし、そうやって彼と別れたあとも縛られ続けるのは本望だ。
でも、指環を見るたびにきっと、私はこんなものをもらっていながら彼とは結婚できなかったのだとつらくなるに違いない。
だったら、安手のもののほうがそのお値段分、気持ちも軽く済みそうな気がする。

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