憧れの上司は実は猫かぶり!?~ウブな部下は俺様御曹司に溺愛される~
彼の胸を拳で叩いて抗議したが、それはへろへろだった。

「すまん、忘れてた」

顔をのぞき込み、すかさず彼が唇を重ねてくる。

「……そんなんで機嫌、直ると思ってるんですか」

「直らないのか?」

「うっ」

心配そうな顔をされ、言葉が詰まった。

「……直りました」

「なら、よかった」

右の口端をつり上げ、彼がにやりと笑う。
まんまと策に乗せられたと腹を立てながらも、ようやく彼が戻ってきたのだと嬉しくなった。

龍志の作ってくれた晩ごはんを食べる。

「実家、大丈夫だったんですか」

「んー、その話はあとだ。
やっと七星の顔を見られたんだから、つまらない話はしたくない」

苦々しげに彼の顔が歪み、少し不安になった。

「ちゃんと料理、してたんだな。
食材、揃ってた」

「あっ、……はい」

褒められてほのかに頬が熱くなる。
料理は龍志と私を繋ぐものだ。
作れば、教えてくれた日々を思い出す。
だからどんなに遅くなっても、作って食べるようにしていた。

「あんま、無理はするなよ」

にかっと彼が笑うだけで嬉しくなる。
たった五日、離れていただけと言われればそうだろう。
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