憧れの上司は実は猫かぶり!?~ウブな部下は俺様御曹司に溺愛される~
けれど私はあのとき、龍志はもうここに帰ってこないのではないかと思ったのだ。
だからこうやって、普通にごはんを食べているだけでほっとした。

食べ終わったあとはいつもどおり、並んで後片付けをした。
これでまた、彼が三十歳になるまでは今までどおりの生活が続けられる。
そう、思ったけれど。

「予定が変わって実家へ戻らなきゃいけなくなった。
すまない」

改まって龍志が私に向かって頭を下げ、なにを言っているのかわからない。

「でも、三十になるまでは自由にしていいって約束だって」

「そのはずだった。
でも、兄貴が死んで俺がそのあとを引き継がなきゃいけなくなった。
すまない」

再び彼が、私に向かって頭を下げる。

「じゃ、じゃあ、会社だけ辞めて、まだここで……」

「七星」

厳しい声で名を呼ばれ、身体がびくりと震えた。

「そういうわけにはいかないのは、わかってるだろ」

「……わかんない」

わかっている、あんな大会社の御曹司で跡取りである龍志は、自分の自由になんてできないのなんて。

「わかんないですよ……」

それでも、わかりたくなんかない。
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