憧れの上司は実は猫かぶり!?~ウブな部下は俺様御曹司に溺愛される~
龍志が私を嫌いになって去っていくなら仕方がない。
でも、家の都合だから?
しかも勝手に約束を破って。

「なんでいつも俺様なのに、こんなときは親に従うんですか?
いつもみたいに俺のやりたいようにやるって言ってくださいよ」

「そうだな」

そっと龍志の腕が、私を包み込む。

「そう、言えたらいいんだけどな」

彼の手は心細そうに震えていて、私の胸を酷く痛ませた。

「……そうだ」

その胸を押して身体を離し、彼の顔を見る。
眼鏡の向こうの瞳は濡れていた。

「いっそ、駆け落ちしましょう?
それで、知らない土地で、ふたりで一からやり直すんです。
きっと龍志ならどこの会社でも雇ってくれますし、私も頑張るから大丈夫ですよ」

「そうだな、それもいいな」

泣き出しそうに彼が笑い、私の目尻を指先で拭う。

「家のしがらみを捨てて誰も知らない土地で七星とふたりで暮らす。
そうできたら幸せだろうな」

「そうですよ。
今すぐ荷物をまとめて、……あ、でも、この時間だと新幹線も飛行機もないかもですね。
朝一で……」

「七星」

私を呼ぶその声は、どこまでも優しく、私を愛しんでいた。
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