憧れの上司は実は猫かぶり!?~ウブな部下は俺様御曹司に溺愛される~
どういう意味かわからなくて、彼の顔を見上げていた。
私の手を両手で挟み、彼の親指が私の目尻を拭う。

「最後の、思い出を作ろう」

眼鏡の向こうで目尻を下げ、彼が私を見る。

「……はい」

また出てきた涙に気づかれたくなくて、龍志の胸に顔をうずめた。

ひさしぶりに一緒のベッドに入る。

「結局ベッド、見に行けなかったな」

「そうですね」

ふたりで寝ると狭いから、買い替えようと相談していたのに見にすら行けなかった。
しかし、こうなるとそれでよかった気もする。

「欲しいものとかないか。
なんでも買ってやる」

「ないですよ、そんなの。
でも、しいて挙げるとしたら……」

寝返りを打ち、身体を横に向けて彼を見た。

「……龍志」

はっと彼が、息を呑むのがわかった。

「冗談ですよ」

小さく笑って、誤魔化す。
これ以上、彼を困らせたくない。

「……ねえ、龍志」

「なんだ?」

彼も寝返りを打ち、私を見た。

「私が本当に龍志と結婚して、宇佐神の家に嫁入りするという選択肢はないんですか」

何度かそれを考えた。
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