憧れの上司は実は猫かぶり!?~ウブな部下は俺様御曹司に溺愛される~
信じられないというふうに龍志は眼鏡の向こうで何度か、瞬きをした。

「龍志の大事なメイク道具、私が引き継いで大事に使います。
ダメ、ですか?」

私の顔をじっと見つめたまま、彼は黙っている。
しかしその目は少しずつ、潤んでいっていた。

「……いい」

彼が起き上がり、私と向かいあう。

「七星があれを使ってくれるのなら、これ以上嬉しいことはない」

にっこりと笑った彼の目からぽろりと涙が一粒、落ちていく。
それはとても綺麗で、一生忘れないと思った。

新居にはほとんどのものをそろえてあったので、残り数日をそちらで過ごした。
購入してあるので家賃の心配はいらないとはいえこんな高級レジデンスの共益費などが怖いが、それを込みであの株などを譲ったのだと言われた。
龍志はどこまでもしっかりしている。



金曜は龍志の送別会だった。

「宇佐神課長がいなくなると、淋しくなります」

「というか、宇佐神課長がいなくなるといろいろ心配です」

ひとりの男性社員の言葉で、ほぼ全員の目が小山田部長へと向く。
彼はそんな様子に気づかず、腰巾着の男性社員に専務とヨイショされていい気になっていた。

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