憧れの上司は実は猫かぶり!?~ウブな部下は俺様御曹司に溺愛される~
その言葉どおり兄は父と母を説得して大学進学から俺が家を出ることを認めさせ、その代わり両親が希望する大学へ進むように俺へ頼んだ。
遠くの大学を希望したのはそこへ行きたかったわけではなくただ家を出たかっただけだし、これ以上、兄を困らせたくなくて承知した。

その後も就職やなんかで揉めるたび、兄はあいだに入って両親を説得してくれた。
兄にはどんなに感謝してもしきれない。
実家に戻るのは不本意ではあったけれど、これからは俺が兄を支えるのだと思うと嬉しくもあった。
なのに、死んだ?
いまだに俺は、その現実が受け入れられない。

「……そういえば」

あのとき、俺は兄になんと言ったのだろう。
考えるがさっぱり思い出せない。
ただ、あれほど兄が嬉しそうに笑った顔を後にも先にも、それこそ義姉さんと結婚したときでさえも見たことがない。

「龍志さん!
龍志さん、どちらにいらっしゃるの!?」

「ちっ」

ぼーっと物思いに耽っていたところに甲高い母の声が聞こえてきて思わず舌打ちをしていた。

「まあ!
まだそんな格好で!
早く着替えてちょうだい、親類の方々がお待ちかねよ」

「……わかりました」

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