憧れの上司は実は猫かぶり!?~ウブな部下は俺様御曹司に溺愛される~

「わ、私は皆さんの取り決めに従うだけですから」

隣の座る義姉さんに尋ねると申し訳なさそうに背を丸めた。

……俺が義姉さんと奏多を守らなければ。
でなければ俺によくしてくれた兄に、顔向けできない。

結局、喪主は俺が務めることになった。
義姉さんはあんな状態だし、父はいまだに帰ってこない。
これではまともに兄を送り出せないので、俺がやるしかなかった。

「兄貴。
俺が悪かったのか」

家を出たのは兄貴のため。
そう言い聞かせて実家での兄たちの境遇を見て見ぬフリをしてきた。
もしかして、俺が兄を追い詰めたのか。
それで兄はとうとう耐えられなくなって、トラックの前に飛び出たのでは。
そんな考えが拭い去れない。
しかし問いかけたところで棺の中の兄は、血の気のない硬い顔で黙っているだけだった。

通夜が始まるギリギリの時間になってようやく、父が会場へやってきた。
義姉と奏多に目もくれず、定められた席に座る。
すぐに通夜が始まったが、それはよそよそしいものだった。
俺と義姉以外、兄の死を悼んでいるものはいない。
形だけの通夜は空虚で、兄が憐れになった。

通夜が終わり、父を捕まえる。

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