憧れの上司は実は猫かぶり!?~ウブな部下は俺様御曹司に溺愛される~
いい匂いがあたりには漂っていて、食欲を誘う。
しかし。

「えっ、そういうわけには……!」

昨晩に続き朝食までごちそうになるとか、申し訳ない。

「いいから。
鍵は開けておくから、さっさと顔洗ってこい?」

視線で早く行けと彼がドアを差す。

「じゃ、じゃあ、お言葉に甘えて……」

「うん」

満足げに頷き、課長は料理を続けている。
その脇を抜けて、自分の部屋に帰った。
顔を洗いながらふと、身体も心もここしばらくないくらいリラックスしているのに気づいた。
きっと昨日、課長が相談に乗ってくれ、マッサージもしてくれたからだ。

「お礼、しなきゃな」

鏡の中で笑う私にはぎこちなさがなく、嬉しそうだった。

「おじゃましまーす……」

今回はチャイムは鳴らさず、おそるおそる隣のドアを開ける。

「おー、できたぞー」

リビングから課長の声がする。
テーブルの上には和食の朝食が並べられていた。
炊きたてのご飯と具だくさんなお味噌汁、切り干し大根の煮物と卵焼きに大根おろしののった厚揚げ、さらにほうれん草のおひたしまである。

「……旅館の朝ごはんみたいですね」

それを見た感想がそれだった。
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