憧れの上司は実は猫かぶり!?~ウブな部下は俺様御曹司に溺愛される~
教えてほしいと頼んでから、彼は根気よく私に料理の指導をしてくれた。
おかげでこの頃は、人並みに料理ができるようになっている。

「これからは七星の手料理が食べられるって、喜んでたんだけどな」

淋しそうに彼がいい、その場の空気がしんみりとなった。

「ああっ、すまん!
最後くらい、笑って明るくいきたいよな」

慌てて取り繕ってきた彼の目は、赤くなっていた。
きっと、私の目も赤くなっている。

朝食のあとは龍志が最後のメイクをしてくれた。

「本当は龍志に、メイクも教えてもらうはずだったんですけどね……」

はぁーっと私の口から、ため息が落ちていく。

「社内研修、参加してみろ。
いろいろ、ためになるから」

「それは上司としての命令ですか、それとも夫としてのアドバイス?」

「両方だ」

ルージュを塗ったばかりの唇に、彼は唇を重ねてきた。

「……リップ、落ちちゃいます」

「塗り直すから問題ない」

だからとでもいうのか、再び彼が唇を重ねてくる。
しかもそれは深く長く、どちらからともなく貪りあう。

「七星……」

眼鏡の奥から熱に浮かされた瞳で彼が私を見ている。

「龍志……」

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