憧れの上司は実は猫かぶり!?~ウブな部下は俺様御曹司に溺愛される~
それに子供には父親がいない以外にもお金のことで苦労はさせたくなかった。
とはいえ、龍志を取り戻せばすべて解決だけれど。

「ん、わかった」

満足げに笹西さんが膝を打つ。

「その依頼、確かに受けた。
とりあえず一週間、時間をくれ。
そのあいだに準備を調える」

うんとひとつ、力強く彼が頷く。

「よろしくお願いします」

私とともに兄も、頭を下げてくれた。

細かい打ち合わせのあと、兄がマンションまで送ってくれる。

「無理はするなよ、大事な身体なんだからな。
なにかあったら、夜中でもかまわないから連絡しろ」

「ありがとう、お兄ちゃん」

兄が酷く心配してくれ、嬉しくなるのと同時にありがたかった。
龍志と別れたあと、なんだかんだ言いながら落ち込んでいたと思う。
けれど兄が励ましてくれたおかげで、頑張ろうという気になれた。
気を抜くと折れてしまいそうな気持ちをどうにか保っているのも、兄のおかげだ。

「お兄ちゃんが私のお兄ちゃんでよかったよ」

「なんだよ、急に」

兄は戸惑っているが、照れくさくてそれ以上は感謝を伝えられなかった。


妊娠はしばらく、会社には伝えないことにした。
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