憧れの上司は実は猫かぶり!?~ウブな部下は俺様御曹司に溺愛される~
なんとなく恥ずかしくて、一歩後ろを歩きながら彼のシャツを摘まむ。

「笑わない、笑わない」

とか言っているが、まったく信用ができない。
しかし言わないのもあれだし、そろりと口を開いた。

「……ハンバーグと、ミートソースのスパゲティ、……です」

じっと俯いて彼の反応を待つ。
これを言うと大抵、似合わないと大爆笑されるのだ。

「ふぅん。
じゃあ、挽き肉とトマトソースの組み合わせが好きなのか?
チキンのトマト煮とか、ロールキャベツも好きそうだな」

けれど宇佐神課長は笑うことなく、考えながらいくつかの野菜をカゴに入れた。

「あっ、はい。
好き、です」

「了解」

軽い調子で言い、彼は店の中を進んでいく。

……え、笑わないんだ。

それだけで宇佐神課長への好感度が上がったのは内緒にしておこう。

私もついでにカップ麺や冷凍食品を選んだが、なにも言われなかった。
そんなの身体に悪いとか怒られるのかと思ったのに。
私の食生活を心配する割に、そのあたりは融通が利くらしくてよかった。

買い物を済ませてマンションに帰ってくる。
車を降りて玄関まできて、びくりと身体が震えた。

< 56 / 411 >

この作品をシェア

pagetop