憧れの上司は実は猫かぶり!?~ウブな部下は俺様御曹司に溺愛される~
……見られてる。

いつもの視線を感じた。
ポストに手紙が入っていたくらいだし、もうこの場所はわかっているのだ。

「気にするな。
行くぞ」

「あっ」

立ち止まっていた私とさりげなく手を繋ぎ、課長が歩き出す。
後ろからは憎々しげな視線が追ってきた。

宇佐神課長は自分の部屋には帰らず、一緒に私の部屋に入ってきた。

「ちょっと邪魔するな」

彼はベランダに出て、周囲を見渡している。
しばらく確認して、中に戻ってきた。

「下からこっち、見てる」

「ひっ」

怖くてつい、悲鳴を上げて自分の身体を抱いた。

「なあ。
なんか心当たりとかあるのか?」

「ないですよ、そんなの!
急になんか、つきまとわれるようになって……」

あの男に好かれるようなことをした覚えはない。
それどころかどこかで会った記憶すらないのだ。

「すまん」

ヒステリックに叫んだ私を落ち着けるように、課長は軽く肩を叩いた。

「でもアイツ、どっかで見た気がするんだよな……」

それはこのマンションの周辺ではないかと思ったが、課長の様子だとそうではないようだ。

「ちょっと心当たりを当たってみるわ」

< 57 / 411 >

この作品をシェア

pagetop