憧れの上司は実は猫かぶり!?~ウブな部下は俺様御曹司に溺愛される~
その瞬間、一気に身体から力が抜ける。
ぶわっと毛穴から汗を噴き、いまさら心臓がどっどと速く鼓動するのを感じた。

「え、あんなに堂々としてたのに?」

三人の視線が集中する。
とはいえ、兄は運転中なのでちらっとだが。

「滅茶苦茶怖かったですよ。
お母さん、話が通じないうえにずっと高音で奇声を上げてて、無駄に恐怖をあおるし。
お父さんは電話の向こうで黙っているだけで、なぜか凄い威圧感があるし。
ああ、怖かった……」

身体から力が抜け、シートにもたれかかる。
冷静でいなければとは思っていたが、よく平然と交渉できたものだと我ながら感心する。

「俺のためによく頑張ってくれたな。
ありがとう」

私の手を握る龍志の手に力が入った。

途中で笹西さんを送って降ろす。

「お礼はまた、改めて」

「はい。
今日は積もる話もあるだろうし」

「本当にありがとうな」

「龍志は飲み、一回ね」

笑いながら去っていく笹西さんの背中にふたり揃って頭を下げる。
すぐに兄は再び車を出した。

「で。
どっちに帰るんだ?」

「どっち?」

兄の問いの意味がわからず、怪訝そうに龍志が私の顔を見る。

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