憧れの上司は実は猫かぶり!?~ウブな部下は俺様御曹司に溺愛される~
軽く椅子の背をぽんぽんと叩き、課長は自分の席へと去っていった。
直接、私の肩や背じゃなかったのは、気を遣ってくれたんだと思う。

……ほんと、いい上司だよね。

カフェオレを飲みながら、席に着いた宇佐神課長をこっそりうかがう。
さっぱりと短く切りそろえられた黒髪、微笑みを欠かさず優しげな印象であのように気遣いも上手く、女子社員どころか男性社員にも人気だ。
しかもかけている黒メタルスクエア眼鏡がさらに顔面偏差値を爆上がりさせている。
私も例に漏れず、宇佐神課長に憧れていた。
まあ、こっそり憧れるだけで彼女になりたいとか高望みはしていないが。

午後からの会議は来春の新作発表プロモーションの、事前打ち合わせだった。
プロモーションにはもちろん、私のいる広告宣伝部だけではなく営業や製品部など多数の部署が関わる。
そのため部内で事前に、方向性や役割など話しあって決めるのだ。

「井ノ上さんにインフルエンサーとの調整役を頼もうと思うが、どうだ?」

「えっ、私ですか?」

唐突に指名されて、焦った。
じっとレンズ越しに宇佐神課長が私を見つめる。
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