憧れの上司は実は猫かぶり!?~ウブな部下は俺様御曹司に溺愛される~
その目は信頼していると語っているように私には見えた。

「わかりました。
まかせてください」

力強く頷いてみせる。
憧れの上司が、私を信頼してまかせてくれるのだ。
断るなんて選択肢はない。

「よろしく頼む」

満足げに笑い、課長は頷いた。
その期待に応えられるように頑張らねばと俄然、やる気が出てきた。

多少のトラブルはあったが仕事自体はよい方向で終わり、会社を出る。
しかし電車に乗って降りる駅が近づくにつれて気分はどんどん重くなっていった。
改札を抜ける頃には、重いため息が落ちる。
駅の出口でバッグの肩紐を堅く握り、辺りをうかがっていた。

「いないよね……」

そろりと足を踏み出し、家までの道を足早に歩く。
いくらもいかないうちに後ろから誰かついてきているのに気づいた。
途端にびくりと身体が震え足が止まりそうになったが、気づかないフリをしてさらに足を速める。
最後は半ば駆け足になり、住んでいるマンションに飛び込んだ。
背後を気にしながらエレベーターのボタンを押す。
ちょうど一階にいたそれはすぐに扉が開いた。
乗り込むと同時に閉まるボタンを連打する。
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