憧れの上司は実は猫かぶり!?~ウブな部下は俺様御曹司に溺愛される~
もう宇佐神課長が事情を知っている今、私ひとりなら時間を作って警察へ相談へ行くのも可能だ。
忙しい彼にそこまでさせる必要はない。

「ばーか。
俺が。
心配なの」

「あう」

持っていたボールペンの先で彼が私の額を突く。

「明日、絶対警察連れていってやるから大丈夫だ。
その代わり、ちょっとばかし仕事振るけど、頼むな」

「わかりました!」

私の顔を見て軽く頷いたあと、宇佐神課長はまたキーを打ち始めた。
私も自分の席に戻り、指示を確認する。
私のために時間を作ってくれているのだ、仕事を振られるのなんて問題ない。

「宇佐神課長、『緑淡舎』(りよくたんしや)西坂(にしさか)様より二番です」

「ありがとう」

いつもは気にしない電話の取り次ぎが、なぜかそのときは気に留まった。
緑淡舎とは少し前に、弊社の化粧品の特集を組んでくれた出版社だ。
西坂さんはそのときの雑誌の編集長だったはず。
あのあと、あそことはお付き合いはないけれど、また新規広告の話でもあったのかな。

「私は出てきますので、あとはよろしく頼みます」

そのうち、宇佐神課長が鞄を持って立ち上がった。
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