憧れの上司は実は猫かぶり!?~ウブな部下は俺様御曹司に溺愛される~
少し悩んだあと、締まらない顔で彼がへらっと笑う。

「宇佐神課長はいいかもしれませんが、私のせいで刺されたとか嫌ですよ。
それに」

その考えに思い至り、足が止まる。

「宇佐神課長が死んだりしたら、私……」

そんなの、後悔してもしきれない。
それに、なにかもっと大事なものを失うような気がした。

「俺が死んだらどうするんだ?」

俯いてしまった私の顔を課長がのぞき込む。
私はそのときを想像してこんなにつらい思いなのに、少しからかうようなところのある彼にむっとした。

「どうもしません!」

課長を振り切り、勢いよく歩き出す。

「ちょっと待てって」

すぐに彼も追いつき、並んで歩き始めた。

「そうだな、俺が死んでも七星が泣いてくれなかったら死にきれないし」

「泣きますよ。
少なくとも宇佐神課長は憧れの上司なので」

「泣くんだ?」

意外そうな声にますます腹が立ち、足を速める。

「当たり前じゃないですか。
てか、宣伝広告部のほとんどの人間が泣きますよ」

私だけが特別だと思われたくなくて、普通だと強調する。

「あー、うん。
そーだな。
それは嬉しいけどな……」

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