憧れの上司は実は猫かぶり!?~ウブな部下は俺様御曹司に溺愛される~
その手段とはもしかして、宇佐神課長が不利な立場になったり、危ない目に遭ったりするのだろうか。
だったら、無理などしなくていい。
彼の袖を引き、問うようにじっと顔を見つめる。
少し見つめあったあと、課長は私と唇を重ねてきた。

「七星はなにも心配しなくていい。
なあに、ちょっと借りを作りたくない相手に頼るだけだから、たいしたことない」

笹西さんの前だというのにキスされて、目を白黒させている私を課長はおかしそうに笑っている。
おかげで、どういうことなのかよく聞けなかった。


これでとりあえず、私に平和が訪れた――わけではなく。

「ナナ!
あの男は誰だ!?」

警察に事情を説明にきてくれた兄と宇佐神課長がしっかり鉢合わせ、……というか課長はずっと私の付き添いをしてくれているのでそうなるわけだが、めちゃめちゃ問い詰められるはめになった。

「えーっと……。
会社の上司の、宇佐神課長」

曖昧な笑顔で私は当たり障りのない紹介をしたというのに。

「はじめまして、お兄さん。
七星の彼氏の、宇佐神です」

まるで挑発するかのごとく、課長がにっこりと笑う。
それに頭を抱えたのはいうまでもない。
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