憧れの上司は実は猫かぶり!?~ウブな部下は俺様御曹司に溺愛される~

「ナナ!
彼氏って、彼氏って言ったぞ!
いつからあんな男と付き合ってるんだ!?」

「いいからお兄ちゃん、落ち着いて」

警察署の一角で騒いでいるものだから、視線が痛い。

「とにかく。
あとでゆっくり説明するから。
私たちはこのあと、弁護士さんとの話もあるし、お兄ちゃんはいったん帰って。
いい?」

「わ、わかった」

私の剣幕に押されたのか、それとも妹に甘い兄だからか、渋々ながら承知してくれてほっとした。
しかし、帰りながら「ナナに彼氏……ナナに彼氏……」
とぶつぶつ言っていたのが気にかかる。
近いうちに説明の場を設けなければいけないが……気が重い。



こうしてようやく、私に平穏が訪れたわけだが。

「宇佐神課長」

「なんだ?
マズかったか?」

心配そうに眼鏡の下で彼の眉が寄る。

「いえ、そんなことは。
今日も美味しい、です」

適当に笑って誤魔化し、料理に箸を伸ばす。
ストーカー事件から四日が過ぎたが、いまだに私は課長に食事を作ってもらっていた。

「なら、いいが」

キュウリの漬物を摘まみ、彼が口に入れてぽりぽりといい音を立てる。
……のはいいが。

「その」

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