あきれるくらいそばにいて
目覚めの悪いまま、わたしはベッドから下りると、洗面所に顔を洗いに行った。
そして、鏡に映る自分を見て思う。
わたしは、地味で特に取り柄もなくて、ただ毎日家と会社の往復をするだけの生活を送る人間。
人としての楽しみも喜びも幸せも、何もない。
今まで一応2人の男性と付き合ったことはあるけれど、1人目はセックスを怖がるわたしに対して理解を示してくれず、浮気をされて別れた。
2人目の人は、わたしのトラウマを理解し、優しく思いやりのある人だったが、周りから人気のある人で、彼の隣にいるのにわたしは相応しくないないんじゃないかと思い、一方的な思いで別れてしまった。
それから、誰とも恋愛をすることなく、28歳を迎えた。
わたしには、恋愛をする資格など無いのだ。
わたしは薄化粧に仕事に見合う私服に着替えると、家を出た。
自宅から会社まではバスに乗り、電車に乗り換えて40分程で到着する。
出社すると、何やら社内の女性たちがざわついていて、というかはしゃいでいて、わたしは不思議に思いながら、自分のデスクについた。
すると、女性社員たちが集まる中心に背の高い男性がいることに気付く。
あぁ、そういえば、今日から総務課の主任が新しく異動して来るって言ってたっけ。
そう思っていると、一瞬だけその新しい主任であろう男性の顔が見えた。
えっ?
最初は見間違いかと思ったが、いや、見間違いではない。
女性社員に囲まれていた新しく異動して来た主任は、わたしの元彼である白崎未来だったのだ。