あきれるくらいそばにいて

「食べる?」

わたしがそう言って、お弁当箱を未来の方に寄せると、未来は嬉しそうに「いいの?」と言った。

「うん、最近あまり食欲なくて。」
「大丈夫?」
「うん、いつもの事だから。わたしはカフェラテだけで充分だから、良かったら食べて?」

未来はわたしの言葉に「じゃあ、いただこうかな。」と言うと、わたしが使った箸を持ち、お弁当箱を自分の目の前まで持って来ると「いただきます。」と手を合わせた。

そして、最初に箸をつけたのは玉子焼きだった。

未来は玉子焼きを頬張ると、「んー、やっぱり葉月の玉子焼きはほんのり甘くて丁度良いんだよなぁ。」と言った。

自分の料理を他の人に食べてもらうのなんて久しぶりだ。

というか、まだ未来と付き合っていた頃に食べてもらって以来だ。

未来は、わたしのお弁当を美味しそうに食べてくれ、お米一粒残さずに完食してくれた。

「ご馳走様でした。あー、美味しかった。」
「未来には、量が少なかったんじゃない?」
「いや、そんなことないよ。ありがとう。」

すっかり社会人で主任の風貌も出てきちゃったけど、未来はあの頃の優しさと柔らかい雰囲気は何も変わらない。

未来と一緒に居ると、いつも一人ぼっちで心の隙間風が寂しい音を吹き鳴らしていることを忘れさせてくれる気がした。

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