秘密のカーテンコール〜人気舞台俳優の溺愛〜
「東雲って……」
「そうそう、征の娘」
「そうだったんですか!」
柊木さんの声音が高くなった。
父の名前が出ていてテンションが上がっている……ということは、舞台関係者か。
「柚は悠真のことは……」
「すみません」
叔父の言葉に正直に答えると、彼は紳士的に笑った。
「いえ、いいんです。テレビに出てるわけでもないですし」
「役者さん、ですか……?」
「そうそう、柊木悠真。今、商業演劇界じゃ知らないやつはいないぞ」
叔父が横から自慢げに口を挟む。
「申し訳ありません。私、ほとんど舞台は観ていなくて」
「本当に気にしないでください。征さんにも恒さんにも、本当にお世話になっています」
にっこりと微笑まれて、苦笑いしか返せない。
こんな綺麗な人に笑いかけてもらえるなんて、一生に一度しかないかもしれないのに、気に利いた一言も出てこない。
叔父曰く、彼、柊木悠真は、演劇界のスターだそうだ。
ミュージカルやストレートプレイに主演していて、2000キャパの劇場でも即日完売が出るほど。
もともと舞台畑の事務所に所属していて、映像にはあまり興味がないらしい。
先日候補者が発表になった大きな演劇賞の主演男優賞にもノミネートされている、まさに今ノリに乗っている男優だった。
「柚は本当に演劇界には興味ないからなあ」
「すみませんね」
「昔からそうなんですか?」
柊木さんの問いかけに思わず詰まった。
「そう、ですね」
子どもの頃は、劇場に足を運ぶことが多かった。
父は現役の舞台監督で、劇場に入るとめちゃくちゃ忙しいけれど、ゲネプロというセットも衣装もすべて本番通りに行う通し稽古もよく見学させてもらったし、何より――母が出演していることも多かったから。
でも、中学に進学するタイミングで両親が離婚して、それからはまったく劇場に行っていなかった。
むしろ映画も、テレビも、なるべく芸能の世界には触れないように生きてきた。
だからおすすめのアーティストも好きなアイドルもいない。
学校で友達と話が合わずに困ったこともあったけれど、両親について触れられる可能性を考えると、それでも構わなかった。
――俳優だけは信じない。
桜が舞い散る穏やかな日に、母が出て行って、私はそう心に決めた。
「そうそう、征の娘」
「そうだったんですか!」
柊木さんの声音が高くなった。
父の名前が出ていてテンションが上がっている……ということは、舞台関係者か。
「柚は悠真のことは……」
「すみません」
叔父の言葉に正直に答えると、彼は紳士的に笑った。
「いえ、いいんです。テレビに出てるわけでもないですし」
「役者さん、ですか……?」
「そうそう、柊木悠真。今、商業演劇界じゃ知らないやつはいないぞ」
叔父が横から自慢げに口を挟む。
「申し訳ありません。私、ほとんど舞台は観ていなくて」
「本当に気にしないでください。征さんにも恒さんにも、本当にお世話になっています」
にっこりと微笑まれて、苦笑いしか返せない。
こんな綺麗な人に笑いかけてもらえるなんて、一生に一度しかないかもしれないのに、気に利いた一言も出てこない。
叔父曰く、彼、柊木悠真は、演劇界のスターだそうだ。
ミュージカルやストレートプレイに主演していて、2000キャパの劇場でも即日完売が出るほど。
もともと舞台畑の事務所に所属していて、映像にはあまり興味がないらしい。
先日候補者が発表になった大きな演劇賞の主演男優賞にもノミネートされている、まさに今ノリに乗っている男優だった。
「柚は本当に演劇界には興味ないからなあ」
「すみませんね」
「昔からそうなんですか?」
柊木さんの問いかけに思わず詰まった。
「そう、ですね」
子どもの頃は、劇場に足を運ぶことが多かった。
父は現役の舞台監督で、劇場に入るとめちゃくちゃ忙しいけれど、ゲネプロというセットも衣装もすべて本番通りに行う通し稽古もよく見学させてもらったし、何より――母が出演していることも多かったから。
でも、中学に進学するタイミングで両親が離婚して、それからはまったく劇場に行っていなかった。
むしろ映画も、テレビも、なるべく芸能の世界には触れないように生きてきた。
だからおすすめのアーティストも好きなアイドルもいない。
学校で友達と話が合わずに困ったこともあったけれど、両親について触れられる可能性を考えると、それでも構わなかった。
――俳優だけは信じない。
桜が舞い散る穏やかな日に、母が出て行って、私はそう心に決めた。