同期の姫は、あなどれない
 複雑に絡まった糸を一本ずつ解いていくことは、自分の心の内をさらけ出すことと同じだった。

 そしてようやくそれが終わるころには、こんな恥ずかしい思いをするなら初めからちゃんと伝えた方がよっぽどラクだと思えるほどには、お互いに疲弊していた。

 大人になってから、ここまで自分の心の内を他人に明かしたことはないような気がする。
 今ごろ気恥ずかしさが込み上げてきた。


 私は俯いて意味もなくパンプスの先を見つめていると、このあと家来る?という言葉とともに、頭にぽんと手が置かれる。
 意味を取り違えてはいけない気がして即答できないでいると、姫があぁ、と一度天を仰いだ。続く言葉を固唾をのんで待つ。

 「今日帰したくないって意味だけど、それでもいい?」

 私とは対照的に、感情の起伏が落ち着いて静かな瞳になった姫が、少しだけ首を傾げる。

 (今、その言葉と仕草はずるい)

 そんなことを思いながら、私は差し出された手を取ると、全部の指が絡まって綺麗におさまった。
 手の大きさは全然違うのに、こうやって握るとしっくりくるから不思議だ。

 手を握ると、少し距離が近づく。
 もうあの花のような甘い香りはしない。深い、男の人の香りがする。

 今日は半月、片割れの月だ。

 夜空の半月も一匹で泳ぐハーフムーンも、
 いつかもう一方の片割れが見つかるだろうか。

 見上げた姫の肩越しに白く浮かぶ月を見ながら、そんなことを思った。


 
< 105 / 126 >

この作品をシェア

pagetop